英語を楽しむ:Jane Eyre

映画を見たことをきっかけに、様々な方法でJane Eyre の英語を楽しんでいます。ブロンテ姉妹の作品は子供の頃も好きでしたが、今も、英語の朗読、和訳と原作の比較を通して味わっています。

🍀 映画 Jane Eyre (2011) 🍀

ジェーン・エア [DVD]

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  • Jane 役のミア・ワシコウスカは期待通り、イメージにぴったり。妖精のようなフワフワ感と芯の強い鋭さがあり、美人なのかそうでないか、大人なのか子供か、つかみどころがなく神秘的で素敵でした。マイケル・ファスベンダー演じるロチェスターはちょっとハンサムすぎ、魅力的すぎでしたが、イギリス紳士の雰囲気いっぱい。主演ふたりが英国出身でない中、フェアファックス夫人役のジュディ・ディンチが伝統のイギリスを醸し出していました。
  • 風景、建物、インテリア、衣裳とも満足。特に撮影地ダービーシャー州の自然は、どの季節も素晴らしい。緑の色が季節とシーンにより変化し、味わい深かったです。岩盤はアイルランドのような石灰岩かと思ったら、原作通り黒っぽく風化した花崗岩。衣裳は、生地もデザインも時代や役に合わせてすべて手作りだそう。デザインと生地のカットの仕方、ボタンやフック、生地の質感に注目しました。衣裳担当はオコナーさん (アイリッシュ?)。
  • 内容はかなり省略されていましたが違和感なくまとめられていました。ロチェスター氏の台詞は短くカットされ、饒舌で皮肉屋で辛辣な感じが欠けていたのはやや残念。原作にはない、雪の夜の幻想シーンはなかなかよかったです。全体的には、脚本は原作に忠実で、言葉の雰囲気もそのまま。
  • 監督はキャリー・ジョージ・フクナガ。ぜひまた見たいと思いました。

(余談ですが、ドイツ生まれアイルランド育ちのマイケル・ファスベンダーは、北アイルランドの刑務所でのIRAハンガーストライキの映画『Hunger』の主演。
http://m.youtube.com/#/watch?feature=related&v=Mw7WJLZmVF4
北アイルランドのメイズ刑務所のこの事件は、つい最近1981年の出来事なんですね。ここ30年の、ケルティックタイガー経済成長、今年の女王の訪愛など、感慨深いです。このハンガーストライキの事件は、昨年読んだ Siobhan Dowd作『bog child』にも取り上げられていました。マイケル・ファスベンダーはHunger の中でIRAのリーダーを演じ、ガリガリに痩せ無言で耐え忍ぶ姿はJane Eyre のロチェスターとは別人。彼はアイルランド訛りがあるそうですが、Jane Eyre ではヨークシャー訛りに変えたそう。)

🍀 和訳 ジェーン・エア 🍀


ジェーン・エア
作者:シャーロット・ブロンテ
訳者:大久保康雄
出版社:新潮文庫
発行:1954年

様々な訳がある中、比べてみて大久保康雄訳を選びました。1954年発行ですが古さは感じず、すらすら読めます。
【楽しみ方】
① 映画の後、筋を確認しながら一読。
② 原書の英文と比較。

意訳ではなく一語一句原作に合わせて訳しており原作の中の倒置法、挿入法も、できるだけ忠実に置き換えています。
light gray ⇒「銀鼠色(ぎんねずいろ)」、
superb ⇒「豪奢な(暖炉の光) 」、
suffusion of vapour ⇒「たちこめたもや」、
haughtily ⇒「傲然と」、
riven chords ⇒「引き裂かれた縁弦(えにし)」、
the cold and ghastly moon ⇒ 「冷たく青ざめた月光」 、
The wind sighed low in the firs : all was moorland loneliness and midnight hush ⇒「風が低く吐息をもらした。そこにあるものは原野の寂寥と深夜の静寂であった。」

などなど、気になる訳し方で溢れています。比べていくとやめられない。

🍀 オーディオブック Jane Eyre 🍀

携帯では無料アプリ「audiobooks」で聴いています。LibriVox.org が提供している無料のオーディオブックがたくさんあり、ボランティアの方々のナレーションで、様々な発音が聞けます。こんなにたくさんの英語の小説、詩が無料で聴けるとは驚きです。
Jane Eyre のナレーターはElizabeth Klett さん。登場人物により声色だけでなくイントネーション、アクセントも変えていて素晴らしいです。Janeは標準イギリス英語、Msイングラムは気取った貴族の、降昇豊かなイントネーション、フェアファックス夫人は品があって優しい英語です。
Jane Eyre free audiobook at Librivox: http://librivox.org/jane-eyre-version-3-by-charlotte-bronte/
iPad では youtube で。こちらは英文スクリプト付き。やはりElizabeth Klett さんの朗読です。
http://www.youtube.com/playlist?list=PL2AAEFCAF1D04E74E
Elizabeth Klett さんは、オースティンの『Pride and Prejudice』の朗読もピッタリです。
【楽しみ方】
① 通勤中に聴く。
② 本を読みながら同時に聴く。(その楽しさについて、あとで詳しく書きます。)
シャドウイング(イントネーションに注目して)
④ 夜寝る前、子守唄代わりに。
audiobooks はタイマー機能がついているので、30分にセット。

(余談ですが、 Librivox.org の audiobooks『The Secret Garden (秘密の花園)』のナレーションも素晴らしいです。朗読は Karen Savage さん。: http://www.youtube.com/playlist?list=PLE7F5CFCD72369998
思わす真似したくなるきれいな標準イギリス英語ですが、ヨークシャー訛りの人が何人も登場し、人により口調を変えています。この朗読を聞いて北部イングランドの雰囲気が好きになりました。Jane Eyre に比べ、こちらは単語が簡単なので、音読、シャドウイングがやり易いです。)

🍀 原作 Jane Eyre 🍀


作者:Charlotte Bronte (1816-1855) (父Patrickはアイルランド出身だが、苗字をギリシャ系の姓ブロンテに変えてしまったそう。)
1847年、31歳の時の作品。(アイルランドが飢饉で苦しんでいた時期ですね。)
出版社:Vintage Classics
たくさんの種類が出ていますが、表紙が映画のシーンの最新版にしました。文章は、前述の audiobooks と全くほとんど同じです。(細かくいうと、2つの形容詞の順番が違ったり、一語単語を置き換えたり、など、気づいただけで3箇所違いました。)

【楽しみ方】全600ページと長いので、抜粋して様々な読み方をしています。
オーディオブックを聞きながら読む。これがまた絶妙な味わい。ナレーションは聞き流すつもりで、本の紙の上の文字に集中して読みます。自分でどんどん読んでいる感覚です。意味は音声と文字列両方から頭に入って来るので、苦労して読む感覚がなくて理解でき、目の前に風景が広がります。これは、クラッシックの曲を楽譜を見ながら聴くのと似ています。(例えばスコアを見ながらブラームスのレクイエムを聴く感じ) 音符に乗って音が聞こえる感じです。何度も繰り返すと、音声無しでも、本を開くとJane の声、Mr Rochester の声が聞こえてきます。おすすめ。
音読。声を出して読みます。雰囲気を出して。
和訳と比較。和訳と照らし合わせ。どう訳してあるか、細かく見ると発見がいっぱい。

《原作と大久保訳》ちょっと長いですが9章の一部、書き出します。。
How different had this scene looked when I viewed it laid out beneath the iron sky of winter, stiffened in frosty, shrouded with snow ! When mists as chill as death wandered to the impulse of east winds along those purple peaks, and rolled down "ing" and holm till they blended with the frozen fog of the beck ! That beck was then a torrent, turbid and curbless : it tore asunder the wood --- raving sound --- whirling sleet ---
「霜にこわばり、雪におおわれ、鉄のような冬空の下に広がっていたとき ーー 死のように冷たい霧が東の風に駆りたてられて、その紫色の山頂に沿ってさまよい、牧草地と河の中州に舞い降りてきて谷川の上の凍った河もやと合するときとくらべて、いまのこの風景は、なんという相違であろう!あのときは谷川そのものが奔馬のような濁流で、森をきれぎれにひきちぎり、---- 荒れ狂う響き ---- くるめきおちるみぞれ ----」

160年も前に書かれたにもかかわらず、文章、内容ともに古びてはおらず活き活きと迫ってきます。文体は、コロン、セミコロンを使って状況を詳しく説明したり、分詞構文、挿入句、挿入節、関係詞で内容をふくらませたりしながら、流れるように進んで行きますが、倒置法、感嘆文も用いメリハリがあります。今は使わなくなった言葉、日常の話し言葉にはあまり使わないような形容詞が出てきます(知らない単語がたくさんありました。)が、文法は現在の文法で理解できるものばかりで、英語の普遍性に驚き、英語はすごいな、と思いました。「the men in green , 緑の衣をまとった連中」「Ariel , エイリエル」「the black yew , 黒いイチイの木」が出てきたりする点、ケルト文化の影響を感じます。しかし、Janeの再就職先をアイルランドに設定しながらやや否定的な表現にしていることは、執筆当時のアイルランドの飢饉、仲が良くなかった父親がアイリッシュであることを考えると、複雑な気がします。
ストーリーは見方によってはどっぷりとメロドラマなので、恥ずかしい気がしますが、ちょっと古典なので自分との距離が保て、客観的に楽しめます。何度やっても飽きません。しかしのめり込んで2ヶ月になるのでそろそろ卒業です。


映画 Jane Eyre 2011 のプロモーション映像、付けておきます。